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この時期だからこそお口の管理~コロナ禍の歯科離れは危険~

最終更新日:

【はじめに】

  新型コロナウィルス感染症による自粛ムードが拡がる中、患者さんが医療機関の受診を手控える動きにより各診療科で患者数の減少が見られます。

  特に大きな打撃を受けているのが、健診センター、歯科、小児科、そして形成外科と言われています。

  歯科においては、歯周病安定期治療と訪問歯科診療を延期される患者さんが多く、緊急事態宣言が解除されたあともそれは続いています。では、なぜこの状況に陥ったのでしょうか?

 

 

【受診控えの経緯】

  「歯科医療の現場は感染リスクが高い。」という風評が広がったため、日本歯科医師会は「国民の皆様へ」のメッセージにおいて「歯科医療機関には延期しても問題が少ない治療、定期健診、訪問診療等の延期の検討もお願いしています。」と報じました。

  これを受けて、予防のイメージが強い歯周病のメインテナンスの患者さんのキャンセルが増え、また、感染リスク軽減のため、介護施設からの訪問診療の一時停止も相次ぎました。

  とはいえ、歯科医療の現場のリスクというのは、歯科のスタッフの感染リスクのことであり、歯科治療の中での感染の報告は1件もありません。また、不要不急と言われますが、歯科においては不要の治療はありません。

  では、手控えが続いている歯周病安定期治療、訪問歯科診療を停止することにより、どういった影響が出てくるのでしょうか?

 

 

【歯周病安定期治療とは】

  歯を支えている歯周組織が歯周病菌によって破壊され、歯がぐらつき最後には抜けてしまうのが「歯周病」です。これが全身に及ぼす影響として、動脈硬化等血管系の病気、心臓の病気、肺炎等の呼吸器疾患、早期低体重児出産、糖尿病等があります。

 特に、歯周病は糖尿病の第6番目の合併症と言われるほど関連性があります。(詳細は、広報こうし令和2年1月号「糖尿病と歯周病」をご参照下さい。)

 この歯周病をある程度安定化し、定期的に管理していくものが歯周病安定期治療(SPT)といいます。定期健診と異なり、状況の変化やそれを放置したことにより急性化や重症化することも十分に考えられます。

 

 

【訪問歯科診療の現場】

  通院できない高齢者や障がい者の口腔ケアや、快適に食事をするための歯科治療を施設、居宅を訪問して行っています。

  継続的な口腔ケアができないと、口腔衛生環境の劣化により誤嚥性肺炎のリスクが高まります。また、摂食、咀嚼、嚥下がスムーズに行えないとオーラルフレイル(口周りのわずかな衰え)のリスクも高くなります。(詳細は、令和2年3月号「オーラルフレイルと訪問歯科診療」をご参照下さい。)

 

 

【歯科医師会の取り組み】

  熊本県歯科医師会では、歯科の受診控えによる全身に与える影響について、歯科医院における専門的口腔衛生管理はウィルス感染や重症化を防ぐ効果がある事等をメディアを通じて発信しています。

  後期高齢者歯科口腔健診はオーラルフレイルを早期に見つけ出すことができます。さらに、歯科の介入により予防改善することで、お口の健康を保つことが全身の健康につながり、健康寿命を延ばすことになります。(詳細は、広報こうし令和2年7月号「後期高齢者歯科口腔健診とオーラルフレイル」をご参照下さい。)

 

 

【おわりに】

  最近では、歯科からの提言として「歯科医療と口腔ケアは新型コロナウィルス感染リスクを低下させる」(東京歯科大学名誉教授 奥田克爾先生)や「歯科の介入による細菌性感染を防ぐことでウィルス性感染の重症化予防」(鶴見大学歯学部教授 花田信弘先生)と、ようやくこのような報道がメディアで目立ってきました。

  下記のデータは、奥田先生がデイケアに通う要介護高齢者に対して、歯科衛生士が口腔清掃を中心としたオーラルケアを実施するとインフルエンザ罹患率が低くなることを発表したものです。

  この時期だからこそ、誤嚥性肺炎予防、オーラルフレイル予防、ウィルス性感染の重症化予防のために、ぜひともお口の管理を徹底していただきたいと思います。

 

                                                                インフルエンザ発症低下

 下記アドレスで、KKT公式YouTubeにアップされた当院の取材の様子と熊本県歯科医師会 伊藤明彦会長のメッセージをご覧になることができます。

  https://www.youtube.com/watch?v=ijOO-wMQTCc&t=11s

 

                                         医療法人社団徳治会 長野歯科医院 院長 長野靖弘

 

 

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