人が集まれば、そこには集まった人数の個性や価値観が存在します。学校の中では、それがぶつかり合うことも少なくありません。意見がぶつかり合ったとき、自分の思いを伝えることができる児童もいれば、言い返すことができずに暴言や暴力で表してしまう児童もいます。また、何も言えずに我慢してしまう児童もいます。前2者の場合には、互いの思いを言葉に出してもらい、それぞれが自分自身の言動を振り返り、何を改善していけばいいのかということを考えさせます。トラブルを起こしたことで人格を否定するのではなく、起こった事象についての問題点をはっきりさせて、改善策を考えていくということです。何も言えずに我慢してしまう児童の場合は、気づくことが難しいため、本校では月に1回、心のアンケートを実施しながら実態把握に努めています。同時に、児童の小さな変化に気づく力を教職員個々が身につけておくことが必要であるため、理論的に学んだり、定期的な実践交流をしたりしながら情報交換を続けています。
人権月間の取り組み

年間2回の人権月間の取り組みでは、各学年で教材を使った学習を導入として、自分たちの暮らしの中にある問題につなげて考えていく学習に取り組んでいます。教材を活用して学んだことを、学級の中にある事象と関連させて考え、よりよい学級づくりを目指していきます。例えば、5年生では社会科の学習をきっかけとして、水俣病問題について学びを深めています。歴史的な背景や公害病が起こった科学的な原因を学んでいくとともに、「水俣に学ぶ肥後っ子教室」を活用して水俣に行き、講話を聞き、差別の現実を学び、今の自分の暮らしと照らし合わせながら、自分自身が差別やいじめをしないことや、無くしていくための仲間づくりについて考えています。6年生では、ハンセン病問題の学習に取り組みました。自分たちが暮らしている身近な場所にも大きな問題があることを知り、実際に歴史資料館に行き、展示物等を自分たちで確かめながら学びを深めていきました。
学んだことを通して考えたことは、各学年の人権集会で伝え合ったり、高学年になるとプレゼンテーション資料等を準備して他学年に伝えたり、これからの自分たちの生き方につながるような発信を行いました。
教職員の人権感覚・意識の向上

人権教育を全ての教育活動の基盤に据えた実践を構築していくためには、我々教職員の意識改革、意識向上が必要不可欠です。そこで、年間を通して計画的に研修を行いながら、人権感覚、人権意識の向上及び実践的指導力の向上を目指してきました。
部落解放同盟合志市支部会長の講話から学んだり、夏休み期間中には中学校区の職員を対象に、講師を招いた研修会を実施したりしました。そこには、新たな価値観に触れる出会いがあり、これまでの自分自身の言動等を思い返しながら学ぶことができる時間となりました。また、2月には、中学校区で実践レポートを通した研修会を実施しました。代表レポートを聞き、お互いの実践を出し合い、「子ども達の思いを受け止め、どう周りと繋いでいく取り組みをしていくか」などについて学び合うことができました。
人を思いやることができる子どもの育成をめざして
子どもたちは、自分の家族や友だちをはじめ、関わりがある人を大切にできる温かい心をたくさん持っています。反面、ちょっとした行き違いで、周りにいる人を傷つけてしまうような場面もまだまだあります。人権教育を繰り返し学ぶことで、「暮らしの中にある差別を見抜き、みんなで解決しようとする力」を身に付けていく教育活動を進めていきたいと考えています。また、我々教職員は、子どもたちの生活の中にある事象の問題点に気づく力を高めるとともに、子どもたちの声を傾聴し、事象の問題点、解決策を一緒に考えて行く姿勢を大切にしていきたいと思います。
※令和5年度以前の各学校の取り組みは広報誌でご覧いただけます。(3月・6月・9月・12月号に掲載)